クローバー
の。」
「妊娠させたのはオレの責任だ。11年間も、辛い思いをさせた。」
「…遥紀が幸せならそれでよかった。茉莉は私達の愛し合ったしるし。」
「…。」
「大好き。」
「…オレ、父親としても男としても失格だ。いない方がいい。」

茉衣は泣いて、

「ダメ…そんな事言わないで!」

お腹をさすって、

「遥紀は父親なんだよ。茉莉がどれだけ遥紀が父親と知って喜んだと思うの?茉莉を裏切るの?」
「…とうに茉莉をオレは裏切っている。」
「…あのね、この部屋で私はお腹に茉莉がいることを知ったの。私のいた部屋。ベッドも何一つ変わっていない。ここへ泊まりに来て、茉莉と私が過ごせるように残してあるの。弟にまだ子供がいないのもあるけど。この机の中に隠してあるの。」

引き出しを開け、鍵の掛かった箱から取り出す。

「ほら。」
「!?」

二人の写真。

「茉莉に見つけて欲しい。この写真を見つけて大切にして欲しいのが私の夢、誰にも邪魔されたくないから鍵をかけた。…。私には遥紀しかいない。」


「…そういえば、あの箱あのまんまだ。」


診察室の外に出る茉衣。
聖華は、

「お義姉さんどうでした?」
「…赤ちゃん出来てたの。」
「本当ですか!?」

茉衣はベビーカーに眠っているハルカに、

「ハルカもお兄さんね。まだお兄さんなんてわからないけど、きっと楽しくなるのね。」


< 69 / 197 >

この作品をシェア

pagetop