クローバー
遥紀は、

「そんな言葉で締められたらほら、泣き虫な美女がもう涙で前が見えなくなっているじゃないか。人の嫁さんを泣かせたのは罪だよ。」
「…どこのどいつのが1番泣かせたと思ってる。泣かせた元凶は誰だ?俺達はただ、ハルとサナの出会いを再現して、友達でいれることの感謝と、絆を伝えただけだ。本人らはすごく過酷かもしれないけれど、誰だってそれから学んだ素晴らしい事があるはずだ。美化するつもりじゃない。褪せることのない事だと思う。一度きりしかない人生、巡り逢えて、探して、それは貴重なことだろ?それを大切にする。全て、素晴らしい授かりものだ。」

ナオトは言う。

「ありがとう、ナオト。こうなれたのも、子供のおかげだよ。だから子宝というんだ。沢山の事を教えてくれる。」


茉衣は、お色直し&ハルカの授乳。茉莉は、ハルカを抱いて行く。ハルカはおいしそうに飲む。茉衣はハルカを撫でて、

「いい子ね、おとなしく見てくれて、もう少しだから。にこっと笑っていてね。…悪阻も、何とか抑えられていて、よかった。あの場所でうぇうぇ吐いていたらみんなに悪い…。茉莉、ごめんね。あなたに負担ばかりね。」
「…ねぇママ、私がお腹にいるのわかって、パパと離れてるのに、本当に守りたいと思ったの?…私、ママにとって重荷だよ。ママの運命が全て変わってくる。」
「いいの。茉莉がいてくれてよかった。茉莉がお腹にいると知った時、嬉しかった。お腹に大好きな人の赤ちゃんがいるんだよ。茉莉を寂しい思いにさせてしまったのはごめんね。でも、私はパパの事が好きだった。決して結ばれない存在でも愛していた。茉莉がお腹にいるとわかった時、大学生で、起きたら体が重くて、立てなかった。呼びに来たおばあさんに、体がだるいから休んでいい?と言って眠ってたトイレに行きたくなって、何とか立てたら、鏡に写っていた姿はお腹が膨らんでいて、ママは叫んでしまった。おばあさんがびっくりして来たらすぐに、病院行こうね。と言われて、病院で診てもらったら、8か月目に入ってた。一番に思ったのは愛しい気持ち。お腹を撫でてみる。心臓が動いている。この子を守りたい。だから、お医者さんに性別を聞いたわ。女の子と確認してホッとしたわ。」
「何で聞いたの?」
「…もう、家を出る覚悟だった。いくらおばあさんが反対しても決意は変わらなかったわ。」
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