バッドジンクス×シュガーラバー
そして、現在。

カウンター越しに対峙している実の弟は、やはり歓迎的とはいえない雰囲気で自分に怪訝そうな眼差しを向けている。



「本当に、突然だな。一体何しに来たんだ」



他の客に聞かせないためか、抑えた声音で稔が吐き捨てるように言った。

相変わらずだな、と内心では苦笑しながら、それを表には出さず真面目な顔で答える。



「仕事の話だ。申し訳ないが、少し時間が欲しい」

「『仕事の話』?」



ますます訝しげに眉を寄せて、稔が俺と──先ほどから緊張した様子で傍らに立ちすくむ小糸を交互に見た。

そしてひとつ息を吐き、家族ではなく商売人としての引き締まった表情を作る。



「悪いが、今はピークタイムで忙しいんだ。話がしたければ、落ち着くまで待てるのか?」

「ああ、待たせてもらう。こちらも切羽詰まってるからな」



完全にはシャットアウトされなかったことに安堵し、頬を緩ませて肩をすくめた。

稔は少しだけ意外そうに目をまたたかせると、近くにいた女性店員に指示を出す。



「このふたりを、奥の茶室に案内してください。私個人の客です」

「かしこまりました」



丁寧に一礼した女性店員に「こちらです」と促され、俺と小糸はひとまずカウンターを離れることとなった。

案内された個室でふたりきりになったとたん、左隣の座布団に座る小糸が堪えきれないといった様子でため息を吐く。
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