バッドジンクス×シュガーラバー
『あの……久浦部長は、ご実家の会社を継ぎたいとは思わなかったんですか?』
……ああ、なるほど。
内心で合点しながら、その問いかけにキッパリと答える。
『なかったな。自分に経営者が向いてるとは思わないし、昔からそういうのは繊細で努力家の弟の方が適任だと思ってた。ちなみに叔父には娘がひとりいるが、とっくに結婚して家を出ているからうちの会社に後継者争いなんて物騒なものは存在しなくて、わりと平和だ。弟も、同級生の奥さんと仲良くやっているようだし』
あっけらかんと話す俺に、小糸は『そうなんですね』と少しだけ表情を緩めた。
その反応の真意がわからなくて、ついじっと見つめる。
俺の無言の視線から逃げるように、彼女がまたうつむいて蕎麦をすすり始めた。
見下ろした先にあるつむじを眺めながら、俺はボソリと漏らす。
『まあ……実はいろいろあって、今俺は弟と気まずい。だから、交渉のときはおまえの説得も頼りにしてるからな』
『え』
不意打ちを受けた小糸が顔を上げたが、逆に視線を落として天丼の残りをかき込んだ。
『ちょ……久浦部長、それは一体どういう……』
『ほら、さっさと食え。なんなら俺が食べさせてやろうか?』
『っえ、遠慮します!』
こちらの軽口にブンブンと首を振って過剰なほど拒否を示し、小糸は食事に集中し始める。
彼女の様子を見つめつつ、俺はひそかに嘆息したのだった。
……ああ、なるほど。
内心で合点しながら、その問いかけにキッパリと答える。
『なかったな。自分に経営者が向いてるとは思わないし、昔からそういうのは繊細で努力家の弟の方が適任だと思ってた。ちなみに叔父には娘がひとりいるが、とっくに結婚して家を出ているからうちの会社に後継者争いなんて物騒なものは存在しなくて、わりと平和だ。弟も、同級生の奥さんと仲良くやっているようだし』
あっけらかんと話す俺に、小糸は『そうなんですね』と少しだけ表情を緩めた。
その反応の真意がわからなくて、ついじっと見つめる。
俺の無言の視線から逃げるように、彼女がまたうつむいて蕎麦をすすり始めた。
見下ろした先にあるつむじを眺めながら、俺はボソリと漏らす。
『まあ……実はいろいろあって、今俺は弟と気まずい。だから、交渉のときはおまえの説得も頼りにしてるからな』
『え』
不意打ちを受けた小糸が顔を上げたが、逆に視線を落として天丼の残りをかき込んだ。
『ちょ……久浦部長、それは一体どういう……』
『ほら、さっさと食え。なんなら俺が食べさせてやろうか?』
『っえ、遠慮します!』
こちらの軽口にブンブンと首を振って過剰なほど拒否を示し、小糸は食事に集中し始める。
彼女の様子を見つめつつ、俺はひそかに嘆息したのだった。