バッドジンクス×シュガーラバー
「はい。……機会がありましたら、ぜひ」



うなずいた稔さんが踵を返し、付き添いの方とエレベーターに乗り込むのを見送った。

他の階にある別部署に用事があるという牧野さんと別れ、久浦部長と私は、デイリーフーズ部のあるオフィスを目指す。



「菜乃花は、ずいぶんおまえのことを気に入っていたようだ。できたら、本当に会いに行ってやってくれるとうれしい」



話し合いが上手くまとまったからか、久浦部長がどこか機嫌よくそんなことを言った。

斜め後ろを歩く私は、部長の言葉を素直にうれしく思う。

けれどもそれを表すこともなく、わざと話を逸らした。



「稔さんと菜乃花さんは、学生時代からずっとお付き合いされていたんでしたっけ」

「ああ、高校2年のときからかな。大学卒業と同時に入籍したから、思いきり先を越されて兄としては少しショックだった」



久浦部長の苦笑を、斜め後ろからの横顔で確認する。

その表情にすら簡単にときめいてしまう自分の心臓が、今は憎らしい。

私はギュッと、胸もとに書類を抱く手に力を込めた。
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