バッドジンクス×シュガーラバー
「照れすぎだろ、小糸。顔真っ赤だぞ」

「……ッ」



ひゅっと息を飲んで、両頬を手のひらで包む。

そこはわかりやすく熱くなっていて、部長の言う『顔真っ赤』というのは大げさでもなんでもない表現なのだと思い知らされた。

だ、だって、あんなふうにクリーム取るとか……!



「め、免疫が、ないので」

「……ふぅん」



蚊の鳴くような声でつぶやいた言葉に、部長が納得いっているのかいないのか、よくわからない返事をした。

私はといえばこれ以上赤い顔を晒すまいと、必死で平常心を取り戻そうとしている。


今まで、極力男の人と関わらないように生きてきた。

そんな私に、異性との不意打ちのスキンシップに対する耐性なんてあるわけがない。

多少強面とはいえイケメンな久浦部長は女性に触れるのなんて慣れてるのかもしれないけど、こちらにとっては些細な接触も死活問題だ。

……いや。死活問題というのは、“私に”関わる男性の方も同じことが言えるのか。

そんなふうに考えたら、少しだけ気持ちが落ちついた気がした。



「失礼……しました」



ぼそぼそと言って、サービスのレモン水で喉をうるおす。

熱くなりすぎた身体に、冷たい飲み物が心地よかった。

ほう、と小さく、息を吐く。



「あー、コレ美味いな。皮の硬さと、中のキャラメルクリームの甘さが絶妙」



視線をずらしてみれば、久浦部長が手掴みで食べているのは半分に切られたエクレアだ。

食ってみろとばかりに皿を寄越すので、私も素手で失礼してかぶりつく。
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