バッドジンクス×シュガーラバー
「というか、キスなんてされて平気なの? 久浦部長じゃなくて、憂依のことよ」

「え……いや、平気ってことはないけど……」



強い眼差しと口調で問われ、また逸らした目線をテーブルに落とした。

ごにょごにょと曖昧につぶやく私のこの態度を、侑子は意外に感じたようだ。

美人な彼女が眉を上げて目を丸くするのを、視界の隅で捉えた。



「……たしかに、久浦部長は一見イイ男だけど。なに、憂依もあの顔には絆されちゃったわけ?」

「へ!? いやそんな、そんなことはないよ!?」

「だって密室でいきなりキスって、普通にセクハラ案件よそれ。けど憂依、その様子じゃなんだか許しちゃってる感じじゃない。怒るとか、嫌悪感とか、ないの?」



侑子のセリフはもっともだ。

私は「うーん」と声を漏らして、無意味にメガネのテンプル部分を触る。

言葉を選びながら、ゆっくりと答えた。



「許すというか……たしかにやり方は強引だったけど、それは謝ってくれたし……結果的に久浦部長は、自分の身を危険に晒してまで私を励ましてくれたっていうか……だからその、嫌悪感までは、別に」
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