バッドジンクス×シュガーラバー
『ヒトと、話すときは。ちゃんと相手の目を見ろって、教わらなかったか?』

『……ッ、』



ドアを閉め切った密室の中、1対1の会話をしているにもかかわらず決して合わない視線に焦れて、小糸のひたいを指先で押しながら顔を上向かせた直後。

俺は思わず、彼女を見つめたまま固まった。

廊下で植田本部長に紹介されたあのときから今に至るまでずっと、警戒心の強い小動物のような態度を貫いていた小糸の顔をまともに見たのは、このときが初めてで。

彼女の、少しずり落ちたメガネの上から直接見えた素顔の瞳と視線が交わった瞬間──俺の身体に、電流が走ったのだ。

相当度が強くて厚いのか、メガネのレンズ越しよりだいぶ大きく見える丸い目は怯えたように少し潤んでいて……そんな彼女の目を、綺麗だと思った。

さらには、距離の近さに驚いたのか一気に顔を赤くさせたその反応にも、ゾクリと嗜虐心がわいてしまう。

小糸が逃げるようにミーティングルームを出ていかなかったら、一体俺はどうしていたのか。

今となっては知る由もないが、あの瞬間、どうしようもなく惹き付けられた彼女の素顔を思い出すたび、同時に自分の単純さに呆れた。

一瞬だけ見たあのときの小糸の表情が脳裏にこびりついて離れず、仕事中だというのにどうにも意識してしまう。まあ、それを表に出すほどの純情さは持ち合わせていないが。
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