バッドジンクス×シュガーラバー
さてどうする、とひそかに頭の片隅で考え続けて2週間。

ひとまずこの問題は脇に放り投げ、恒例の“市場調査”に小糸を連れ出したことが、またさらに俺の中にある彼女への興味を刺激する結果となってしまった。

ロールケーキをひとくち食べた瞬間の、ほどけるような笑顔とか。

彼女の小作りでぽってりとした唇の横についたクリームを何気なく取ってやったときに見せた、羞恥心でいっぱいの表情とか。

俺が開発した商品を、「1番好き」だと言ってくれたこととか。

困ったことに、小糸の言動はどうにも俺の琴線に触れて──自分がどんどん彼女に惹かれていくのを、止めることができない。

けれども無自覚に俺を翻弄する小糸は、想像以上に一筋縄ではいかない女だった。

男が苦手、とは異動初日に聞いてはいたが、言動がどうにも釈然としないのだ。

同じテーブルを囲んでスイーツを食べているうちに会話が増え、少しは慣れてくれたかと思ったら、帰りの車中でまたパッタリと黙り込み、絶対にこちらと目を合わせようとしない。

社に戻ってからもそれは続き、とうとう、俺の我慢の限界がきた。



『待て小糸。ちょうどいい、少し話がある』

『えっ!? や、あの、は、話って』

『3分で済む。……おまえが、素直に吐きさえすればだが』



オフィスがあるフロアのエレベーター前。今まさに退社するところだった小糸に出くわし、その細い腕を掴んで引き留める。

そうして連れ込んだミーティングルームで、ここまで徹底的に俺を避ける理由を問い詰めれば、返ってきたのは予想外すぎる言葉だった。
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