俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない

せめて自分にできることをと、全力でサポートするつもりで訪れた。

けれど、キスを交わしたあの夜から、少しずつ変わっていったのだ。

どこにいても目立つ整った美しい容姿を持ち、しかし容赦なく毒を吐くエトワールのトップデザイナー兼副社長であり、尊敬すべき上司でもある陽。

初恋の人、鳴瀬に似ている気がしてはいるが、特に意識をしてきたわけではなかった。

けれど、唇を合わせて以降、陽を異性として見るようになり、気になり出して……知った。

微笑む瞳には、いつだって、紬花への思いやりが滲んでいたのを。

その温かさは心地よくて、紬花の心に深く染みわたり、恋というも甘くもどかしい感情を芽吹かせたのだ。


「でも今は、御子柴さんの笑顔が見たくて仕方ないんです」


以前のように、名前を呼びながら、大丈夫だと励ましながら浮かべる、柔らかな微笑みを。

紬花の唇から紡がれる願望が何から生まれたものなのか。

陽は、自分の冷たい態度を紬花が気にしていたのは勘付いていた。

その空気をただ払拭したいがためにそんな風に言っているのだとしたら、笑ってなどやれない。

気にするなと、悪かったと謝り、優しくなどできない。

求めるものはそんな答えではないのだ。

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