俺様御曹司はウブな花嫁を逃がさない
「……なぜだ?」
どうか、その無防備で柔らかな唇が紡ぐ真実が、自分にとって幸福をもたらすものであってほしい。
胸の内で希う陽の下で、紬花は視線を彷徨わせる。
「な……なぜって、それは……ですね」
紬花の心を支配するひとつの想い。
その正体に気付いた日から、萎むことも薄れることもなく存在を主張する恋心。
想いが向かう先は、今、自分を見下ろしている陽なのだが……。
正直に答えることは即ち、告白をするということになる。
誤魔化すか否か。
逡巡した後、紬花は心臓が口から飛び出るのではと思うほどの高鳴る鼓動を感じながら、唇を開く。
「御子柴さんのことが、好き、だからだと……思います……多分」
だんだんと尻すぼんでゆく紬花の声。
想いを伝えてしまえば、今後気まずくなるかもしれないとわかっている。
もしかしたら仕事もやり辛くなるだろうことも想像はできた。
けれども、陽に嘘はつきたくないと、紬花は勇気を振り絞って言葉にしたのだが、途中、襲う羞恥心に負け、最後を曖昧にして告げてしまった。
自分を見下ろす陽からは何の言葉も反応も返ってこない。
恥ずかしさに視線をはずしてしまっているので正確にはわからないが、ひたすらに見つめられている気配はする。
居たたまれなくなり、顔を覆い隠そうと両手を眼前まで引き寄せたところで、「多分って、余計だろ」と言うや否や、陽はずっと突っ張っていた肘を曲げ、紬花の腕におでこを押し付けた。