基準値きみのキングダム
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𓐍
𓈒
ふいに玄関の方から、ガチャガチャと鍵を回す音が聞こえてきて、ふっと意識が浮上する。
「う……」
重い瞼を無理やり持ち上げて、明るさに慣れず、ぱちぱちと瞬きをして、まだぽやぽやしている頭で考える。
あれ、私、なんで寝てるんだっけ────そうだ、熱があって、それで……。
朝、眠ったきり1度も目覚めず、今までぐっすり寝ていたみたい。
今、何時?
慌ててスマホを手繰り寄せて確認すれば、もう夕方。
と、いうことは。
さっき聞こえた鍵の音は。
「ただいまー! 杏ちゃん、だいじょーぶっ?」
奈央と京香が帰ってきた合図。
どうしよう、まだ夕ごはん準備してない。
早くチンしてあっためなきゃ────と、自分が体調不良であることもすっかり忘れてガバッと慌てて起き上がる。
小走りに部屋を飛び出したら、すぐさま視界がぐわんと歪んだ。
なにこれ気持ち悪────そうだった、私、風邪っぴきだった、と思い出したときには体がふらっと傾いていて。
転げる、と思ったのに。
「……!」
前方に傾いた体は、そのままぽすっと何かに収まった。