基準値きみのキングダム



背後からすっと、私を隠すように現れたのは。




「ほら釣れた」

「……お前な」




恭介。

したり顔の近衛くんに、眉をつり上げる。
それから、こちらをぱっと振り向いて。




「そんで、杏奈も」

「……私?」


「厄介な客が来たら、俺のことすぐ呼べって言ったろ」

「うわひでえ。心の友のことを迷惑客呼ばわりするなんてさー」

「誰が心の友だよ」




目の前で繰り広げられるやりとりに、ここが3年4組の教室なんじゃないかって錯覚しそうになった。




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