基準値きみのキングダム
そんな、いきさつを説明すると近衛くんは「へえー」とあまり興味のなさそうな返事をした。
「恭介、呼んで来たほうがいいよね?」
近衛くんは、きっと恭介に用事があるんだろう。
そう思って首を傾げたけれど。
「いや、いーよ」
「いいの?」
「だって、あいつすぐ釣れるし」
「……?」
「ていうか、杏奈ちゃん、そういう和服? 似合うねー」
「っ?」
貸してもらっている制服、臙脂色の作務衣。
それをまじまじと見つめた近衛くんは、少し身を乗り出して。
「髪も、そうやってまとめてる方がいいね。杏奈ちゃん首すらっとしてるし、なんといっても、うなじがエロ────」
「おい椋」
その声にぴくっと体が反応する。