売れ残りですが結婚してください

そんなことなど何も知らない翠は展示会のことで浮き足立っていた。

そう、許嫁の存在などすっかり頭から離れていたのだ。

「ええええ？ちょっと翠ちゃん。それが何かわかってる？」

翌日、展示会に行けることを石神に報告するとかなり驚いた様子。

「はい。展示会に行くんですよ」

石神はぶんぶんと首を横に振る。

「だからそうじゃなくて〜もう全然わかってない。いい？展示会に行くのはとりあえずちょっとおいおいといて、本屋で出会ったイケメンにお茶に誘われたというのはナンパっていうの。それで展示会に行くっていうのはデートに誘われたってこと」

ナンパもデートも２７年間未経験の翠には未知な世界だ。

だが実際にはもうそ世界に片足を突っ込んだ状態でもある。

「デートにナンパ……」