売れ残りですが結婚してください
「あっもしもし?昨日はありがとうね」

『あ〜それはいいよ。ところでさ、翠の様子はどう?』

冴子は2階の翠の部屋の方を見ながら大きなため息を吐いた。

「それがね〜本当に自分が結婚するってことわかってるのかなって感じ。今も展示会に行くんだ〜って嬉しそうだったわよ」

『そうなんだ。いやね……昨日父さんすごく大事なこと翠に言い忘れてるって思い出して』

「え?何それ」

『結婚式まで相手の人と顔を合わせないってこと言ってなかったでしょ?』

「あ〜!」

『翠は真面目で優しい子だから結婚しないとは言わないけど……初顔合わせが式当日ってことを教えてあげないとまずいよ。だって私なら絶対に逃げるし』

問題山積みのこの結婚に冴子の方がブルーになってきた。

なんでこんな大事なことをお父さんは言わなかったのよ!と思うとイラっとする。

「仕方ないじゃん。あのお父さんよ」

どこか抜けたところのある自分の夫。

娘の一言に何もいえなくなった。

そして電話が切れるとため息が出る。

どのタイミングでそのことを言えばいいの?

祖母の願いとはいえ娘の幸せを考えると複雑な気持ちだった
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