売れ残りですが結婚してください
シュウからメールが届いたのは展覧会から３日が経った頃だった。

翠の都合に合わせてくれるというシュウの申し出で勤務先の美術館の休館日の前日である日曜日の夜に会うことになった。

そのことを知っているのは先輩の石神だけ。

家族には石神と食事をして帰ると伝えた。これも石神の助言だ。

シュウと翠が会うのはこれで最後だろうと思ってのことだった。

まだやり残した仕事があったが時間厳守という石神に言われ待ち合わせである美術館に隣接している公園へ向かった。

「あれ？先輩もこっちに用事があるんですか？」

シュウの顔を見てみたいからついてきたとは言えず「ちょっとね」と言葉を濁した。

すると前方に長身の男性を発見。

「あっ」

「何？」

「あの方です」

翠が指差した男性こそ人生初めてのデート相手のシュウだった。

遠目からの印象だけで石神は目を見開いた。

「ねえ……めちゃくちゃイケメンじゃない？」

「……そうですね」

翠はまるで他人事のように返事をした。
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