売れ残りですが結婚してください
だけど翠がハッとする。

想像して変顔になってたからシュウに笑われたのかと思ったからだ。

「どうしたの?」

急に真顔になる翠にシュウは驚く。

「お見苦しいものを見せてしまったかと……」

「え?見苦しいなんて……その逆。翠のコロコロと変わる表情が可愛くて見惚れていたんだよ」

真顔で答えるシュウに今度は翠は驚いた。

と同時に普段言われない「可愛い」に反応し顔が熱くなり、恥ずかしさのあまりメニューで顔を隠す始末。

だがシュウはそんな翠の仕草が可愛すぎると目を細めていた。

それからシュウはメニューを上から順に読み上げた。

すると翠がいいなと思うものに対し、ピタッと動きが止まるということにシュウは気づく。

だから翠の反応を楽しみながらオーダーをした。

まさか自分の表情を見て注文したとは知らない翠は、料理が運ばれてくるたびに驚いた様子で見入っていた。

その表情が『なんで私の食べたいと思ったものが届いてるの?私何も言ってないのに』と言いたげで、シュウはそんな翠の喜んでいる顔に癒されていた。



食事を終え店を出て駅のほうへ向かっているとシュウの足がピタッと止まった。

「どうしました?」

翠が声をかけるとシュウは「次はいつ会えますか?」と尋ねた。

だが翠は口を閉ざしてしまった。

「翠?」

「あの……これってデートですか?」

翠の直球にもシュウは動じず「デートだよ」と答えた。

すると翠は「ごめんなさい」と頭を下げた。
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