売れ残りですが結婚してください
「え?」
翠がパッっと顔を上げ、顔を強張らせた。
シュウは翠の変化を見逃さなかった。
「写真くらいあるよね。だって結婚まで考えてるんだろ?」
写真なんてあるわけがない。
結婚式当日まで夫となる人の顔を見ることができないのだから。
だがそんな事をシュウに話したらどう思うだろう。
翠は何も言えなくなった。
「なんて顔をしてるんだよ。まるで結婚したくないみたいな顔だよ」
「え?」
自分ではわからなかったが、翠の表情は結婚式を待ちわびる花嫁の表情とは真逆のような不安そうな顔だった。
「もし事情があるのなら聞かせてくれないか?」
さっきまでの優しい笑顔は消え、シュウのまっすぐな目に翠はつい口に出してしまった。