売れ残りですが結婚してください
「は？！何を言ってるんですか？私は結婚するんですよ」

翠はシュウの考えていることが全くわからなかった。

「わかってる。わかってて言ってるんだ。誰かを好きになるということがどういうことか知ってからでも結婚は遅くないと思う。それに恋は一人じゃできない。相手が必要だ」

もっともらしいことを言っているように聞こえるが、常識を超えている。

いくら結婚前に恋をしようと言われても困るというもの。

「そういうの別にいいです」

「え？」

「私が誰かを好きになったことがなくたって私は結婚するんです。相手も私に何かを望んでいるとは思えないので」

今更足掻いたところでどうにかなるものでもないことを翠が一番よくわかっている。

それに無条件で結婚する翠に恋の経験が必要だとはこれっぽっちも思っていなかった。

だがシュウは反論する。

「何も望んでないなんてことはないよ」

「え？」

「結婚は男女が単に同じ屋根の下に暮らすだけとは違う。そんな簡単なことじゃないんだよ」

翠はシュウがなぜここまでムキになるのか全くわからない。

「それでも私があなたと恋をするなんてことはないです」

「……別に本気で好きになって欲しいとは思ってない。ただ、君に恋をすることがどんなことかをわかって欲しいんだ。でもその気がないのなら仕方ないよね。ごめん……変なことを言って」

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