売れ残りですが結婚してください

（自分の正直な気持ちを伝えたのになんだろう、この後味の悪さは）

翠はモヤモヤしながら帰宅した。

結婚することが決まっている相手に恋をしようなんて非常識なことを言ったシュウの気持ちは理解できない。

だけどそれ以上に自分が今まで誰かを好きになったことがないことが普通じゃないと知ったことだ。

今まで恋をしなかったことで何か不自由を感じたことはなかった。

だけどシュウに恋も知らないで嫁ぐことがおかしいと言われたことがひどく胸に刺さった。



「ただいま」

家に帰ると玄関に唯の靴があることに気づく。

すると唯がひょこっと顔を出した。

「翠」

「あっ！唯姉、来てたんだ」

「うん。写真を探しに来たんだ。結婚式で使うらしいの」

「……そうなんだ」

唯の嬉しそうな顔を見たら余計に自分が今まで恋をしていなかったことが凄く恥ずかしく感じてしまった翠だった。

だが唯はそんな翠の異変に気づく。

「ねえ、何かあったの？私でよかったら……聞くよ」