売れ残りですが結婚してください
いつどこで知り合いに会うか不安だった翠はいつも降りる駅の一つ前の駅で待ち合わせをする徹底ぶり。

相手を待たせるのを嫌い、約束の時間よりも随分早く駅に着いた翠だがシュウと初めて展覧会に行った時ときとは全く違う緊張感があった。

初めて一緒に展覧会に行った時は、ただ連れてってくれる人という感覚でしかなかったが、今日は友達としてお出かけをする。

同じ人との待ち合わせなのに関係性が変わるだけでこんなにも違うなんて……翠は気持ちの変化に戸惑っていた。

すると翠の立ってる付近で見覚えのあるの車が止まった。

シュウの車だ。

「待たせてごめん」

「いえ、私も今来たので」

友達になったのだからもっとフランクに話したいと思うのだが、相手は男性。

翠の話し方はまだどこかぎこちない。

だがシュウにとっては翠のその不器用ささえ愛おしく感じていた。



車は高速道路に入った。

「あの……今日はどこにいくんですか？」

行き先を知らない翠が尋ねると、シュウは翠に笑顔を向けるとすぐに前を向いた。

「いいところ。ところで翠は、蕎麦は好き？」

「蕎麦ですか？……はい好きです」

「じゃあ〜楽しみにしてて」

シュウは明確な場所は敢えて言わなかった。

どんなところに行くのだろうと思いながら緊張するが、窓から見える青々とした空や緑色の景色に翠は心地よさを感じていた。
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