求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~

管理職というのは、ただでさえ仕事が山のようにある。

ミスが起きたら、『次は気を付けろよ!』で済ませる人が多いのだ。
それが悪いとは思わないし。私が管理職になってもそうなるだろう。

上原課長が特別なだけ。
そんな彼を『神』と崇める社員も少なくないのだ。


「上原課長って、前世は神だったんじゃないですか」

飲み干したグラスをテーブルに置きつつ言うと、隣に座る彼がクスッと笑う。

「じゃあ、中野さんは女神だね。会社でそう呼ぼうかな」

「やっ、やめてくださいよ。山瀬君が笑い死にます!」

神様が纏うような真っ白のマントは、上原課長なら様になるだろう。
だが、私ならば割烹着を着た食堂のおばちゃん。可愛く言ってもテルテル坊主だ。

冗談でなく、山瀬君を一発であの世行きにさせる自信がある。

慌てふためく私の肩を、上原課長はそっと引き寄せる。
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