求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~

週明けの月曜日。
上原課長は部長のお供で、朝から取引先へ直行した。部課長が不在という状態は滅多にない。

そういう時に限り、なぜだか図ったようなタイミングで事件が起きる。

発端は朝一番にかかってきた電話だった。
電話の主は、私と山瀬君が営業窓口の港家電の山田さん。

ちょうど私が他の電話に出ていたからか、山瀬君が彼と話した。
電話の間、山瀬君はずっと顔を強張らせ、申し訳ございませんと繰り返していた。

そして電話を終えた彼は、私の呼びかけに応じず、高木さんのデスクに直行した。

「高木さん! 港家電のロゴ、カラーが変わってるんですけど。なんで教えてくれなかったんっすか!?」

天井を突き破るほどの怒声がフロアに響く。

シンっと静寂が打ち、誰もが仕事の手を止め、事の成り行きを遠目で見ていた。

そんな中、私だけが椅子から跳ねるように立ち上がり、ふたりの元へ駆けつける。

「山瀬君。それ、どういうこと!?」

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