求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
今回のミスは、それだけ痛恨なもの。彼もそれが身に染みて分かっているんだろう。

「大丈夫です。なんとかなりましたし……」

もしかして、心配事でもあるんですか?

ふつふつと湧き上がった疑問を喉元で留めた。

ついさっき、私用電話をしていた彼は顔が蒼白していて、只事じゃなさそうだった。

これまで意識してなかったが、彼にとって電話は、何に代えても出なければならないものじゃないんだろうか? それは一体……。

疑問を持ちつつ、暗い面持ちの高木さんとエレベーターに乗り込む。
何が高木さんをそんなに暗くさせるのか、非常に気になる。

だが、上原課長は彼と話をすると言っていた。彼に任せた方がいいだろう。


下降したエレベーターが営業部のフロアに着き、彼とふたりで所属部に向う。と、ドアを開けっ放しの所属部から、苛立ちを隠せない声が聞こえてきた。山瀬君のものだ。
< 119 / 165 >

この作品をシェア

pagetop