求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
「本当っ、いい加減にしろって言いたくなるっす」

「ええ。ミスをフォローする身にもなってほしいです」

山瀬君の意見に同意したのは、坪井係長だろう。

ふたりが誰を話題にしているかは、簡単に想像がつく。高木さんのことだろう。

私の隣にいる彼も目を伏せて立ち止まってしまう。話をやめさせようと足を前に動かすと、山瀬君が投げやりな口調で言った。

「高木さん。わざとミスしてんじゃないっすか。やる気ないなら辞めたらいいのに」

言い過ぎだ。どんなに腹が立とうと口にしちゃいけないことがある。

カツッと靴音をわざと鳴らし、存在をアピールする。が、私が前に出るよりも先に、高木さんが動いた。

「わざとって、そんなことするかよ!」

高木さんの怒声に、山瀬君は驚いて顔を強張らせる。だが、すぐに反撃に出る。

「じゃぁ、なんでミスが多いんすか!? 前はこんなことなかったでしょう!」

「それはっ……」


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