求愛一夜～次期社長とふたり暮らししています～

高木さんのお子さん、大樹君は半年前に病気が発覚し、入院しているという。
彼の妻で大樹君の母親は、毎日のように病院に通っているようだ。

高木さんにかかってくる電話は、不安を募らせた妻からのものだった。彼がそこまで話すと、上原課長が口を開く。

「そういう事情なら、話してほしかった。もっとやりようがあったぞ」

「すみません。でもこれは、俺の問題なんで……」

弱々しい声に胸が締め付けられ、ドアからそっと耳を離した。

高木さんが抱えている事情は分かった。半年前から彼が変わった理由もすべて。

山瀬君は唇を噛み締め、目を赤くしている。
さっき、感情を抑えらず、『やる気ないなら辞めたらいい』と発言したことを深く後悔しているんだろう。

坪井係長もバツが悪そうに俯いたままだ。