求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
彼の視線の先には、私が膝で抱えるバッグがある

それは開口部から物を放り込んでも壊れない、丈夫だけが取り柄の相棒だ。

ハイブランドでもないナイロン製のバッグ
に、真剣な眼差しを注がれる理由がさっぱり分からない。

「私の鞄、やっぱり地味ですよね……」

私が自嘲的に笑うと、上原課長が柔らかく微笑する。

「そんなことないよ、仕事中はシンプルなのが一番。客先に派手なブランドバッグ持っていかれたら、快く思わないお客さんもいるだろうし」

「えっ、そんなところまで見られてるんですか!?」

「気にする人は気にするよ。あの、さ……」

上原課長が言い辛そうに声を濁す。一旦置いた後、少し前かがみになった彼に聞かれる。

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