求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
それが私だっていいじゃない……。だって娘だもの。

次に苦手だった彼の顔が頭を過った。

いまでは高木さんと年賀状のやり取りをする仲だ。新薬が効果あったようでお子さんの具合も上向きだそう。

私は変われた。すべては上原課長のお蔭。

彼は誠実な人だ。
ありさって子を好きだとしても身体の関係はないと思う。

想いをぶつけて、それでもダメなら彼を許そう。嫌な感情でなく嫌味でもなく、私を変えてくれた彼に伝えよう。

いまなら、言える気がする。
さよならの前に、ありがとうって……。


溢れ出る涙が頬を伝って流れ落ちる。雨と混じって私の心まで濡らしていく。
どれくらいそうしていたのか、不意に雨が止んだ。違う。

肩に温もりが触れ、誰かが傘を私に差してくれたと気づいた。


「見つけた」

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