求愛一夜～次期社長とふたり暮らししています～
肩で息をする気配、振り返るよりも先に胸が震える。声がどうしようなく擦り切れた。

「上原課長っ……どうして……」

潤んだ視界に映るのは間違いなく彼だ。
会いたくなくて、どうしようもなく会いたかった人。

約束をすっぽかしたのに、彼がどうしてここにいるのか分からない。

わけが分からず、濡れたまつ毛を上下に動かす。

「イベントあるのはテレビで知ってたし、ここかなって思った」

彼が伏し目がちに顔を寄せ、私の顔を覗き込む。

「俺、間に合った？」

「えっ……」

「雨が降ったら、一番に駆けつけるって言ったから……」

優しげな眼差しと言葉を貰い、胸が強く打たれる。

私の大好きな人は欲しい言葉をここぞというタイミングで届ける。外さない一度だって。

目尻に留まる涙をそっと手で拭われる。
ダメだって思うのに声が嗚咽混じりになった。

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