求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
ふたりに近づこうする歩を止めて、怖々と坪井係長の顔を窺う。
タタンッと、タイピングの音を一際強くさせた彼女は淡々と答えた。

「それって老けてるってことですね。アラフォーに片足ツッコんだババアですからね、私は」

ああっ、やっぱりNGワードだった!

私は頭を抱えつつ、エビのように背を逸らす。そこで、私のそばをスッと誰かが通り過ぎた。

スーツの裾をなびかせたのは上原課長だ。
彼はまっすぐ坪井係長のデスクに向う。そして彼女のパソコンをしばし眺めた後、柔らかく微笑した。

その気配を感じたらしく、坪井係長が背を振り返る。

「上原課長。お疲れ様です」

「お疲れ様です。坪井係長、少しデスクを離れて休んでください」

「いえ。そんなわけには……」

「ここ、数字と違ってます。多分、二重集計かな」

「えっ……」

< 40 / 165 >

この作品をシェア

pagetop