求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
やりきれない思いが胸をじわりと占領していく。それがどうしようもなく嫌で口角を無理にでも引き上げた。
「部屋片づけてくるね!」
にこっと笑うと、母がいってらっしゃいとばかりにひらひらと手を振った。
大学時代まで毎日暮らした部屋は階段を上った突き当り。階段を小走りで上がり、自室のドアを開ける。その途端、ハッと目を見張った。
室内にはベッドと机、更に飾り棚がある。
私が飾ったぬいぐるみはどこにも見当たらない。代わりにヒロ君グッズが綺麗に陳列されていた。
私のぬいぐるみ達がいない……。
呆然と見渡すと、部屋の隅に段ボールの箱が三つ積まれているのに気づく。
床にぺたりと座り、段ボールを開けてみる。中身はすべて私のものだった。
母が片づけたんだろう。奈々さんが勝手にやるとは思えない。