求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
この部屋の様子じゃぁ、クローゼットにもヒロ君がいるんだろうな……。

私の勘は当たっているだろう。
段ボールには机に置いておいた化粧品だけじゃなく、クローゼットに仕舞った部屋着も入れられていた。

一番下の段ボールを開ける。
棚に飾ったぬいぐるみが押し込められていた。ゲームセンターのクレーンゲームで取ったものだ。

ゲームセンターには玩具メーカーの営業という仕事柄、足を運ぶ機会が多い。
市場調査で行った際に試しにやってみたらはまってしまったのだ。

一時期、随分とお金を使ったっけ……。もう、いらないや……。

キラキラと目を輝かすぬいぐるみから目を逸らし、机の引き出しからガムテープとサインペンを取り出す。

段ボールの蓋をガムテープできっちりと閉め、サインペンで『燃えるゴミ』と書いてから膝に手をついて立ち上がった。

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