求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
こうしておけばお母さんが捨ててくれるよね……。

選別はすべて済んだ。

布団はさすがに持ち帰れないから、後日郵送で送ればいい。

部屋着を紙袋に入れてドアに向う。その時、裂かれるように胸に痛みが走った。

言いようのない思いがせり上がり、蓋を閉めた段ボールに駆け寄る。ちぎる勢いでガムテープを引き剥がした。


「邪魔なんて、用済みなんて、可哀想……」

弱々しい呟きが静寂に溶けていく。

ぎゅうぎゅうに押し込められたぬいぐるみを手にし、ごめんねと謝りながら紙袋に仕舞った。

どうしても欲しかったから取ったのに。
そばにいて抱き締めたいと思ったのに。

いつから何も感じなくなったんだろう。
何がきっかけでいらなくなったんだろう。

軋み出す自分の胸に何度も問いかける。でも、分からなかった。どうしても、どうやっても――。


「なんて勝手なんだろう。本当に……」


自嘲気味に笑った声は酷く擦り切れていた。

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