求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
リビングの隅に紙袋とバッグを置くと、上原課長がバスタオルを差し出してきた。

「雨で冷えただろう?お風呂湧いてるから、入ってきな」

ここに来る途中、急な雨に降られた。
走ったからそこまで濡れずに済んだし、冷えてはいても風呂を借りるほどじゃない。

「いえ、大丈夫です」

「ダメだよ」

上原課長は声色を真剣にして、じっと私の目を見据える。それだけで彼の思いが痛いほど伝わり、ふかふかのタオルを受け取った。すると彼が頬に微笑を讃える。

「着替えは、スウェットとかでいいかな?」

「いえ。着替えはここにあるので……」

持参した紙袋に視線を流すと上原課長が頷く。

「ゆっくり温まっておいで」

「ありがとうございます……」

この家のお風呂、ゴージャスだし。
ちょっと嬉しいかも……。

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