この雪の下で春を待つ
1.盗人少年

「待て~このコソ泥坊主!!」

閑静な住宅街に響く野太い男の声。

何事かと、家を出た人々の隙間を爽快に走り抜ける1人の少年。

薄汚れたよれよれの長袖の服、裾の破れたズボン。乱雑に切られた髪はぼさぼさ。

だが、少年の瞳にはその辺で肩身を寄せ合う子供よりもずっと生き生きとしている。

「なんだ、またリークか」

「どうせまたあのブタのところからだろう。ほうら、お出ましだ」

住民たちは呆れ顔でノタノタと贅肉を揺らしながら、冬だと言うのに大量の汗を流して走る(どう見ても歩いているようにしか見えない)巨漢の男を見つめた。

「ボール、お前さっさと痩せないからリークに狙われるのさ」

「うるさい!それに俺はポールだ」

ボール…改め、ポールは呆れ顔で見つめている住民たちの前で止まり、肩で大きく息をする。

住民たちは呆れた顔をして、ポールを見つめた。
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