リリカルな恋人たち
オレンジの南瓜がランプシェード代わりになってる手作りっぽい灯籠が、ぽってりと秋の空に沈む夕日のような暖かい光を放っている。

その下を、マスターからキャンディーやチョコレートの詰め合わせをもらった子どもが、はしゃいだ様子で家族が待つテーブル席へ駆け足で通り過ぎた。
可愛い子熊の着ぐるみを着て。


「今夜はハロウィンだし、友ちゃんに首輪つけてほしいな」


その可愛い子を横目で見て、加瀬くんはにっこりとしながら言った。

加瀬くんの瞳にとらえられると、蝋燭に火が灯るみたいに熱くなってゆく。
じゅ、って、焦がれるのが分かるんだ。体の奥が。


「おい、ハロウィンはそーゆーことするためのイベントじゃねーぞ。つーか、お前ら普段どんなプレイしてんの?」


謙介がやや呆れたような、訝るような顔つきで言った。

ふ、普段どんな、って……。
とてもこんなところで言えるようなことじゃないけど、別にアブノーマルなことばっかしてるわけでもない、などと、あまりの動揺から生真面目に答えるところをしてしまい、寸でのところでハッとして口をつぐんだ。


「内緒だよね、友ちゃん」


訳知り顔で愉しそうに語尾を上げて言う加瀬くんに対し、謙介は引くような、気色が悪いものを目にしているような複雑な表情を作る。

……そうだよね、友達のこう言う話、生々しくて聞きたくないよね。

特にわたしたち三人は、中学の同級生で、子どもから大人への過渡期を一緒に過ごしたわけだから、余計に男女の関係について触れるのはこそばゆくて躊躇われる。
恥ずい、恥ずかしい、恥ずかしすぎる、の三段活用でいったら最上級な心境。


「思わせぶりなこと言うのは悪趣味。もうちょい離れて」


淡白な口調で言って、わたしは再びこちらに磁石みたいにくっついてくる加瀬くんの肩を押し返した。

きょとんとした加瀬くんは、しばらく放心したようにわたしのほうを見ていたけれど、やがてなにか諦めたのか黙ってワイングラスを空にした。
< 26 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop