愛妻ドクターの赤裸々馴れ初め
「10月18日、今日が文化祭の2日目です。
3年生は昨日と同じ、特別教室棟で自習。
それじゃあー、今日も頑張りましょー。」
語尾を伸ばし気味な担任の森下先生の挨拶でみんなガタガタと机や椅子を鳴らして立ち上がる。
私は英語と地理をやろっかな。
「未桜ー、行くよー。」
「あ、ごめーん。」
涼華と美月が廊下から呼んでくれた。
大学受験目前の私たちは1・2年生の文化祭の雰囲気から隔離された、特別教室棟で黙々と自習だ。
とはいいつつも、若干気が抜けたような感じで、監督の先生もいないから友達と話す。
「ねぇ、未桜たちはどう?」
彼氏のいる美月の最大の悩みは受験する大学が別々なことだ。
「うーん、お互い変える気はないかな。」
隼斗は有名な都市大学の医学部志望だ。
それに対して私は都道府県は一緒でも、結構距離がある別の大学の英文科。
一緒になることはないし、そうしようと相談したこともない。
「あー、やっぱりかぁーー。
私たちもそうなんだよね。
お互いに来年からの話はしないし、一昨日はっきりと言われたの。
クリスマスの話をしてたら、今年で最後だろうなって。」
しょんぼりと言った美月は、最初からその話をするつもりだったみたいで、勉強道具を一切出していない。
「えー、それは酷くない?」
大学から恋愛を本気ですると言っている涼華はすごくモテるのに現実主義で高校の間はいらないとはっきりしている。
「うーん、でも私もそれに対して今年は楽しもうねって言っちゃったんだよねぇ。」
「あんたも大概だよ。
やだって言ってくれるのを待ってたんじゃないの、彼は。」
「うん、私もそう思うよ。
美月から言って欲しかったんじゃないの?」
「うーん、でもまぁいっかって思っちゃったんだよなぁ。」
意外とあっさりしている。
「私ももう駄目なのかなぁ。
言うまでもないってこと?」
私がそう呟くと、涼華が大笑いした。
ひーひー言いながら、私の肩をバシバシ叩く。
「だーいじょーぶよ。
あんたの旦那はまた別な次元だから。」
「そうそう。言ってみたら?未桜が。
来年のクリスマスはお互いどうしてるのかなぁーってかわいく。」
美月もニヤニヤと悪い笑みを浮かべている。
「え?そんなこと聞いて、別々だろって言われたら立ち直れないよ。」
「よーし、じゃあ分かった。
聞いてごらん。今日の帰りにでも。」
2人にそう言われたら、少し勇気が出てきた。
聞いてみようかな。
*
*
*
話の途切れだし、周りに学生もいない。
今がチャンスじゃない?
「あの、隼斗。
来年のクリスマスも一緒にいられる?」
若干声が震えたけれど、伝わったはずだ。
「あー、陸から未桜たちが自習のときに話してたのを聞いたって聞いたけど、何、別れるつもりなの。」
いつもより少し冷たい声に、心が凍りそうだ。
「わ、私は別れるなんて考えたことない。」
そう、いつも私ばっかり好きで隼斗は私があわあわしているのを楽しそうに見ているだけ。
今は私と付き合ってくれているけど、きっと大学にいったら周りは頭のいい美人でいっぱい。
勝てる気がしない。
「良かった。
もし、未桜に別れるつもりだって言われたら俺の計画が無駄になるかと思った。」
「計画?何の?」
2人でたまに寄り道する公園の前を通りかかると、隼斗が公園の中に向かって進んでいく。
寄り道、久しぶりだなと思いながらついていき、2人でブランコに座った。
「俺と未桜は大学も違うし、キャンパスだって遠いだろ。
だから、どうしたらいいかなって。」
話の流れが読めなくて相槌が打てなかった。
「うん?」
「乗り換えもあるし、片道1200円かかるんだ。
週に1度は無理だとしても、月に1度は絶対に会いたい。
まず、1人暮らしの部屋をできるだけ近いところで探してみる。
通える範囲内でな。
夏休みくらいまでの金は、今まであんまり使ってなかったから大丈夫そうなんだ。
だから、2人でバイトでもしない?短期の。」
なんとなく話が分かってきた。
夏休みまでは今あるお金で会えるときに会う。
夏休みにバイトをして、移動費を稼ぐ。
ってことだよね。
「うん、する。」
ぽつりと呟くと、隼斗は笑った。
「だって、そんなに一生懸命考えてくれてると思わなかったから。
私だって会いたいもん。」
ただ漠然と不安を感じてる私と違って、隼斗は問題の解決案を考えてくれる。
「だから、心配しないで。
俺の親は1年それぞれの1人暮らしを乗り切れたら、一緒に住んでもいいって言ってる。
ただし、未桜の親に許可をもらってからだってさ。
俺は、絶対に未桜と別れるつもりないよ。」
隼斗のこういうところが好きだ。
いつも好き好き言ってくれるより、行動で示してくれたり先の約束を守るために頑張ろうって言ってくれる。
不安が勝って行動に移せない私とは真逆だ。
*
*
*
「ほーらね、言ったでしょう。
心配いらないって。
さっき、私たちが怒られたよ。
余計なことを言って不安にさせるなって。」
「いい旦那じゃない。
未桜の夢を理解して応援してくれてるし。」
「うん、本当に安心した。」
私が素直に返事をすると、目の前の2人は大きなため息をつく。
「はぁー、2日がかりの盛大なのろけだったわね。」
「本当よ。このバカップルめ。」
なんだかんだいじられながらも、2人はずっと応援してくれていた。
付き合うことができたのだって、2人が背中を押してくれたからだ。
男子バスケ部のキャプテンをしていた隼斗を、女子バスケのマネージャーとして見ていた私は、2年生の途中からずっと隼斗のことが好きだった。
それを、男子バスケのマネージャーだった涼華にバレたのだ。
水汲みや洗い物をしながらいろいろな話をこっそり教えてもらったり、3人で話す機会を作ってもらったり。
告白が成功したと報告したら、ものすごく泣いて喜んでくれた。
本当にずっとずっと感謝してる、、、
3年生は昨日と同じ、特別教室棟で自習。
それじゃあー、今日も頑張りましょー。」
語尾を伸ばし気味な担任の森下先生の挨拶でみんなガタガタと机や椅子を鳴らして立ち上がる。
私は英語と地理をやろっかな。
「未桜ー、行くよー。」
「あ、ごめーん。」
涼華と美月が廊下から呼んでくれた。
大学受験目前の私たちは1・2年生の文化祭の雰囲気から隔離された、特別教室棟で黙々と自習だ。
とはいいつつも、若干気が抜けたような感じで、監督の先生もいないから友達と話す。
「ねぇ、未桜たちはどう?」
彼氏のいる美月の最大の悩みは受験する大学が別々なことだ。
「うーん、お互い変える気はないかな。」
隼斗は有名な都市大学の医学部志望だ。
それに対して私は都道府県は一緒でも、結構距離がある別の大学の英文科。
一緒になることはないし、そうしようと相談したこともない。
「あー、やっぱりかぁーー。
私たちもそうなんだよね。
お互いに来年からの話はしないし、一昨日はっきりと言われたの。
クリスマスの話をしてたら、今年で最後だろうなって。」
しょんぼりと言った美月は、最初からその話をするつもりだったみたいで、勉強道具を一切出していない。
「えー、それは酷くない?」
大学から恋愛を本気ですると言っている涼華はすごくモテるのに現実主義で高校の間はいらないとはっきりしている。
「うーん、でも私もそれに対して今年は楽しもうねって言っちゃったんだよねぇ。」
「あんたも大概だよ。
やだって言ってくれるのを待ってたんじゃないの、彼は。」
「うん、私もそう思うよ。
美月から言って欲しかったんじゃないの?」
「うーん、でもまぁいっかって思っちゃったんだよなぁ。」
意外とあっさりしている。
「私ももう駄目なのかなぁ。
言うまでもないってこと?」
私がそう呟くと、涼華が大笑いした。
ひーひー言いながら、私の肩をバシバシ叩く。
「だーいじょーぶよ。
あんたの旦那はまた別な次元だから。」
「そうそう。言ってみたら?未桜が。
来年のクリスマスはお互いどうしてるのかなぁーってかわいく。」
美月もニヤニヤと悪い笑みを浮かべている。
「え?そんなこと聞いて、別々だろって言われたら立ち直れないよ。」
「よーし、じゃあ分かった。
聞いてごらん。今日の帰りにでも。」
2人にそう言われたら、少し勇気が出てきた。
聞いてみようかな。
*
*
*
話の途切れだし、周りに学生もいない。
今がチャンスじゃない?
「あの、隼斗。
来年のクリスマスも一緒にいられる?」
若干声が震えたけれど、伝わったはずだ。
「あー、陸から未桜たちが自習のときに話してたのを聞いたって聞いたけど、何、別れるつもりなの。」
いつもより少し冷たい声に、心が凍りそうだ。
「わ、私は別れるなんて考えたことない。」
そう、いつも私ばっかり好きで隼斗は私があわあわしているのを楽しそうに見ているだけ。
今は私と付き合ってくれているけど、きっと大学にいったら周りは頭のいい美人でいっぱい。
勝てる気がしない。
「良かった。
もし、未桜に別れるつもりだって言われたら俺の計画が無駄になるかと思った。」
「計画?何の?」
2人でたまに寄り道する公園の前を通りかかると、隼斗が公園の中に向かって進んでいく。
寄り道、久しぶりだなと思いながらついていき、2人でブランコに座った。
「俺と未桜は大学も違うし、キャンパスだって遠いだろ。
だから、どうしたらいいかなって。」
話の流れが読めなくて相槌が打てなかった。
「うん?」
「乗り換えもあるし、片道1200円かかるんだ。
週に1度は無理だとしても、月に1度は絶対に会いたい。
まず、1人暮らしの部屋をできるだけ近いところで探してみる。
通える範囲内でな。
夏休みくらいまでの金は、今まであんまり使ってなかったから大丈夫そうなんだ。
だから、2人でバイトでもしない?短期の。」
なんとなく話が分かってきた。
夏休みまでは今あるお金で会えるときに会う。
夏休みにバイトをして、移動費を稼ぐ。
ってことだよね。
「うん、する。」
ぽつりと呟くと、隼斗は笑った。
「だって、そんなに一生懸命考えてくれてると思わなかったから。
私だって会いたいもん。」
ただ漠然と不安を感じてる私と違って、隼斗は問題の解決案を考えてくれる。
「だから、心配しないで。
俺の親は1年それぞれの1人暮らしを乗り切れたら、一緒に住んでもいいって言ってる。
ただし、未桜の親に許可をもらってからだってさ。
俺は、絶対に未桜と別れるつもりないよ。」
隼斗のこういうところが好きだ。
いつも好き好き言ってくれるより、行動で示してくれたり先の約束を守るために頑張ろうって言ってくれる。
不安が勝って行動に移せない私とは真逆だ。
*
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「ほーらね、言ったでしょう。
心配いらないって。
さっき、私たちが怒られたよ。
余計なことを言って不安にさせるなって。」
「いい旦那じゃない。
未桜の夢を理解して応援してくれてるし。」
「うん、本当に安心した。」
私が素直に返事をすると、目の前の2人は大きなため息をつく。
「はぁー、2日がかりの盛大なのろけだったわね。」
「本当よ。このバカップルめ。」
なんだかんだいじられながらも、2人はずっと応援してくれていた。
付き合うことができたのだって、2人が背中を押してくれたからだ。
男子バスケ部のキャプテンをしていた隼斗を、女子バスケのマネージャーとして見ていた私は、2年生の途中からずっと隼斗のことが好きだった。
それを、男子バスケのマネージャーだった涼華にバレたのだ。
水汲みや洗い物をしながらいろいろな話をこっそり教えてもらったり、3人で話す機会を作ってもらったり。
告白が成功したと報告したら、ものすごく泣いて喜んでくれた。
本当にずっとずっと感謝してる、、、