異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
そして二回目。メグミは練りきりの生菓子をひとりにつき三個作った。

――今度は、芸術性を出そう。

色を入れて花をかたどる。やり方は様々にあるが、花びらを作るのに耳かきのような物を使えば、後ろから覗いたほかの候補者が呆れた声を上げた。

「おいおい、なにをやってんだよ」

「…………」

何を言われても気にならない――どころか、繊細で細かな作業をしているときは、誰の声も耳に入らない。一心不乱だ。

メグミは、厨房を視察に来た者の中に、王城の料理長がいたのを知らなかった。

もっとも、誰が料理長なのかも知らされていないのだから、姿を見ても分からなかったに違いない。

選考に落ちれば元の職場に戻るであろう候補者たちには、王城の案内もされないし、調理場や厨房の担当者も紹介されない。おそらくそれば、王の安全のためだ。
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