異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
厨房へ入ると、すぐに取り掛かる。

水の量にも気を付けて、アクを抜きながら小豆を茹でてゆく。途中で何度も水を一気に加え沸騰させて煮る。最初の煮汁は捨ててしまう。差し水をしながら再び煮て、煮汁の濃さを見てざるに上げる。このときの煮汁は取っておく。

鍋にざるの小豆を入れて砂糖を加え、火にかけて、取っておいた煮汁の下の方に沈殿した生あん、つまりは呉も加えてゆく。へらで馴染ませるのを忘れてはならない。

――いい香り……。緊張するわね。

ドキドキと心臓が踊っている。久しぶりだからうまくいくかどうか、不安だ。

――だけど、そんなこと言ってはいられないんだ。

ジリンの申し出を引き受けた目的は多々あれど、サユリの薬代がなけれ公爵の誘いには乗らなかった。薬がもっとも得たいものなのだから、失敗はできない。
< 115 / 271 >

この作品をシェア

pagetop