異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
再度、豆と煮汁とを分け、焦がさないよう煮汁を煮詰める。最後は避けていた小豆と混ぜ、木べらで混ぜる。粒を壊さないよう細心の注意が必要だ。

「ふぅ……。もっと簡単なやり方でもいいのだけど」

メグミは簡単な方法が分かっていても、それに手を伸ばすことができない。簡単に手早くできるのは利点だろうが、あんこの舌触りが違ってしまうからだ。

ただ、作り方に正解があるわけではない。自分がもっとも好きだと思える味になれば、それがその人の作り方となる。

メグミは夢中になると、人が近くに来ても気付かない。

出来上がってから、誰かに見られているのに気がついて振り返れば、ときおり覗きに来ていた背の高い男性が今も立っていた。

よく見れば、調理人の格好をしている。

「あの……」

「気にするな。見ていただけだから」

「はぁ」

たしかに気にしている暇はない。次はもち米だ――とメグミは作業にかかった。

ようやく小さめのおはぎが出来上がるころには、背の高い見学者はいなくなっていた。

小さめにしたのは、食べきれない場合を考えてのことだ。どういう場合でも残されるのを見るのはいやだった。
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