異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
ふと視線を感じて振り返れば、ベルガモットが後ろの方に立っている。メグミは慌てて頭を下げた。
「すみません。気が付きませんでした」
「おまえの集中力は大したものだな。王城の調理場という特殊な場所でも夢中で作業をしている。……それは何という菓子なんだ? 名前はあるのか?」
「豆大福です」
豆と聞いてベルガモットはほんの少し口角を上げたが、すぐにそれを収め、言葉少なく言い放つ。
「あとで私にも一個分けてくれないか」
「はいっ」
背筋がピンと伸びた。表情が大して変わらないベルガモットは、小さな声で呟く。
「おまえの後ろ立てがジリン公爵でなければな」
「え?」
「いやいい。そろそろ時間だ。侍従が来るから、盆に乗せておまえが持ってゆけ。陛下に直接お出しするんだ」
う……と返事に詰まった。黒獣王の前に出ろと言われた。
国王を前にするときは、どういう礼儀作法が必要だっただろうかと頭の中がグルグルしている間に、侍従が呼びに来た。
大きめの丸い盆の上に豆大福が三個載った皿を置いて、レースが縁どられた高級そうな四角の白い布巾を掛ける。
メグミはベルガモットに軽くお辞儀をすると、両手で盆を持ち、国王の待つ部屋へ向かった。
「すみません。気が付きませんでした」
「おまえの集中力は大したものだな。王城の調理場という特殊な場所でも夢中で作業をしている。……それは何という菓子なんだ? 名前はあるのか?」
「豆大福です」
豆と聞いてベルガモットはほんの少し口角を上げたが、すぐにそれを収め、言葉少なく言い放つ。
「あとで私にも一個分けてくれないか」
「はいっ」
背筋がピンと伸びた。表情が大して変わらないベルガモットは、小さな声で呟く。
「おまえの後ろ立てがジリン公爵でなければな」
「え?」
「いやいい。そろそろ時間だ。侍従が来るから、盆に乗せておまえが持ってゆけ。陛下に直接お出しするんだ」
う……と返事に詰まった。黒獣王の前に出ろと言われた。
国王を前にするときは、どういう礼儀作法が必要だっただろうかと頭の中がグルグルしている間に、侍従が呼びに来た。
大きめの丸い盆の上に豆大福が三個載った皿を置いて、レースが縁どられた高級そうな四角の白い布巾を掛ける。
メグミはベルガモットに軽くお辞儀をすると、両手で盆を持ち、国王の待つ部屋へ向かった。