異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
王城での暮らしは想像していた以上に忙しいものだった。

先ず、彼女が住まう部屋として案内されたのは、日ごろから中心となって動く第一厨房の近くだった。

二階にあり南向きのずいぶん良い部屋だ。引き出し付きのクローゼットや上蓋を上げ下げして収納するチェストなどの調度に加えて、寝やすそうなベッドも揃えられている。

料理長は別として、料理人に与えられる部屋の中ではもっとも広いと案内の侍従が言っていた。

まず一人部屋というところに優遇が見え隠れしたが、料理長のベルガモットが料理人たちを集めて説明したところによれば、『国王陛下専属の菓子職人として』彼女は個々の調理場の責任者と同じ地位になるらしい。

おまけに下働きの女の子を一人付けてもらった。名前はアルマ。茶色の髪を後ろで一つに纏めて丸いネットを被っている。メグミと同じくらいの身長だ。

「アルマさんは、もしかしたら、私より年上?」

「そうです。でも仕事は、あなたの身の回りの世話に部屋の掃除、洗濯もしますよ。それと、さん付けはやめてください。メグミさんは私の上になりますから」

にこりともせずに言われた。ついでにと付け加えられたところによれば。

「メグミさん。菓子を作る腕前が高いそうですが、優遇されているって、料理人たちに妬まれてますよ。私たち下働きの女中にも。入ったばかりなのにって」

うわっと背を引いてしまった。
< 138 / 271 >

この作品をシェア

pagetop