異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「本当ならこういうふうに男の人を夜中に部屋へ入れてはいけないんですけど、緊急ということにします」
「……硬いな。それで、なんだ?」
金箔のことを、あれこれと小声で話した。少量でいいので回してほしいと。
「それはいいな。やってみろ。金箔をメグミに回すようベルガモットに言っておく。まずは他国の連中に和菓子を食べてもらわないと話しにならない。小豆の存在を認識してもらう。次に使い道を広めるわけだ。あんこも売るぞ。だからあんこをどう使うか菓子で表してくれ」
「ですから、お菓子だけで小豆を売ってゆくというのは無理が」
「和菓子は、この国で、もしかしたらこの世界で、唯一の菓子だと思うぞ」
コンラートは不敵に笑った。
――考えてみれば、異世界商品だものね。小豆はこちらの世界にはないものだった。持ち込んだことになるんだ。
テツシバの近所にいる占いのおばあさんは、異世界には言及せず、突然現れたメグミたちを『お前たちが現れたのは、偶然だが必然でもあるんじゃろ』とわけの分からない理由づけをした。『玉突きのようにして滑って来たんじゃよ』と言った。
前に住んでいた者はそのまま滑ってどこかへ行き、メグミたちが住んでいた商店街にも、もしかしたらどこか別なところから滑り込んだ者が現れているかもしれない。
その占い師の言う通りなら、戻るところにはすでに誰かがいることになる。もはや引き返せないのだ。この地で亡くなった両親も、彼女も、――小豆も。
もっとも、小豆にしてみれば分布先が広がったにすぎないのかもしれないが。
「……硬いな。それで、なんだ?」
金箔のことを、あれこれと小声で話した。少量でいいので回してほしいと。
「それはいいな。やってみろ。金箔をメグミに回すようベルガモットに言っておく。まずは他国の連中に和菓子を食べてもらわないと話しにならない。小豆の存在を認識してもらう。次に使い道を広めるわけだ。あんこも売るぞ。だからあんこをどう使うか菓子で表してくれ」
「ですから、お菓子だけで小豆を売ってゆくというのは無理が」
「和菓子は、この国で、もしかしたらこの世界で、唯一の菓子だと思うぞ」
コンラートは不敵に笑った。
――考えてみれば、異世界商品だものね。小豆はこちらの世界にはないものだった。持ち込んだことになるんだ。
テツシバの近所にいる占いのおばあさんは、異世界には言及せず、突然現れたメグミたちを『お前たちが現れたのは、偶然だが必然でもあるんじゃろ』とわけの分からない理由づけをした。『玉突きのようにして滑って来たんじゃよ』と言った。
前に住んでいた者はそのまま滑ってどこかへ行き、メグミたちが住んでいた商店街にも、もしかしたらどこか別なところから滑り込んだ者が現れているかもしれない。
その占い師の言う通りなら、戻るところにはすでに誰かがいることになる。もはや引き返せないのだ。この地で亡くなった両親も、彼女も、――小豆も。
もっとも、小豆にしてみれば分布先が広がったにすぎないのかもしれないが。