異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
翌日の夜は、ローズベルがメグミの部屋を訪れる。なかなか来客の多い部屋だ。

ローズベルは、『なんて小さな部屋』とか『粗末な家具だわ』などと言いたい放題したあげく、椅子に座って自分が話したいことをどんどん語った。

「メグミ、昨日の夜中に陛下と逢引きをしていたんですって?」

「えーっ! な、なんですかそれ。新年の夜会に出すお菓子の話をしただけです。私が面会を申し込んでも、順番待ちで時間が過ぎてしまうから来てくださったんですよ。夜中になったのは、陛下はお忙しいってだけで……っ」

昨夜と同じようにベッドに腰を掛けて正面に座るローズベルと話していたメグミは、真っ赤になって飛び上がるようにして立った。言葉に詰まって悶絶するような気分になる。

ローズベルはため息を吐くと、呆れたように言う。

「そんな真っ赤になって何を言っているのよ。陛下だってお忙しい中で睡眠時間まで削って政務をしていらっしゃるのよ。夜中にこちらへ来るのは大変でしたでしょうにね」

「だからそれは、夜会に出す和菓子がそれだけ重要だと考えてくださるからで……っ。小豆のためにも」

「小豆? なにそれ。あ、あんこの原料だったかしら。あんこはいいわね。もっと作って。……というか。前々から思っていたけど、メグミ、あなた鈍いわ」

また言われてしまった。さすがにショックは隠せない。

「そんなに、でしょうか」

「そうよ。あなたは周囲に無頓着すぎるのよ。だから苛められたりするんでしょ。でも、その虐めも大して気にならなかったのよね。陛下が動いていつの間にか終わっていたくらいの認識じゃない?」

「陛下が動いた?」

初耳のような、そうでもないような。『黒獣王』に守られていると言ったのはアルマだったが、具体的に何をしたのかまでは聞いていない。
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