異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
ベルガモットはそれ以上何も言わずに、メグミが剥いた栗を他の者に渡して夜会の食事やデザートのための準備を指示した。栗剥きのために来ていた三人が、メグミの肩を順に軽く叩いてゆく。

彼らからの言葉はない。しかし認めてくれたと感じた。目頭が熱くなるが、やるべきことは山積みだ。自分に配分された栗に手を伸ばして、綺麗にしてゆく。

――両手ですくってもまだ余るほど、ある。

嬉し涙を滲ませた瞳で、別の料理人と話しているベルガモットを見つめれば、彼はメグミへ目を向けずに言う。

「お前が作った豆大福。うまかったぞ。初めての味で、衝撃を受けた。栗羊羹というものも食べてみたい。最高のものを望んでいる」

彼女の視界の中からベルガモットは忙しそうに立ち去った。

「ありがとうございます」

感謝の言葉は間に合う内に届けられなかったが、それでも言わずにはいられない。
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