異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「手を出せ。指先が痛むんじゃないのか? 見せてみろ」
メグミは両手をテーブルの上に出して、手の平側を上向きにすると指を曲げてその先をまず自分で眺める。ささくれ立って赤くなっていたが、寒いせいもあるだろう。
ベルガモットは、料理長の白い服のポケットから合わせ貝のような入れ物を出す。
パカリと蓋を取ると、油性分の多い白いクリームが入っていた。彼はそれを人差し指で掬い取るようにしてからメグミの手を持つと、彼女の指先にそのクリームを塗り込んでゆく。
「くすぐったいです」
「冬だからな。放置すると、割れてくるぞ。私たちは凍るような水にも手を浸す仕事をしている」
「そうですね。ありがとうございます」
――母さんみたい。
と、思ったのは内緒にした方がいいだろう。
「なぁ、メグミ。もしかしたら私は王城を出ることになるかもしれない」
「どうしてですか? ベルガモットさんがいなくなったら、誰が料理長をやるんです。ベルガモットさんでなくては、とても切り盛りできないと思います。それに、メインディッシュは料理長の腕前があればこそ、いまの高いクオリティが保たれているのに」
この王城にベルガモットは必要だ。もっと言うなら、コンラートにとって必要な者に違いない。それなのに去ってしまうというのか。
詰め寄ってしまいそうな雰囲気のメグミの両手を、彼の両手がそっと包んで握った。
メグミは両手をテーブルの上に出して、手の平側を上向きにすると指を曲げてその先をまず自分で眺める。ささくれ立って赤くなっていたが、寒いせいもあるだろう。
ベルガモットは、料理長の白い服のポケットから合わせ貝のような入れ物を出す。
パカリと蓋を取ると、油性分の多い白いクリームが入っていた。彼はそれを人差し指で掬い取るようにしてからメグミの手を持つと、彼女の指先にそのクリームを塗り込んでゆく。
「くすぐったいです」
「冬だからな。放置すると、割れてくるぞ。私たちは凍るような水にも手を浸す仕事をしている」
「そうですね。ありがとうございます」
――母さんみたい。
と、思ったのは内緒にした方がいいだろう。
「なぁ、メグミ。もしかしたら私は王城を出ることになるかもしれない」
「どうしてですか? ベルガモットさんがいなくなったら、誰が料理長をやるんです。ベルガモットさんでなくては、とても切り盛りできないと思います。それに、メインディッシュは料理長の腕前があればこそ、いまの高いクオリティが保たれているのに」
この王城にベルガモットは必要だ。もっと言うなら、コンラートにとって必要な者に違いない。それなのに去ってしまうというのか。
詰め寄ってしまいそうな雰囲気のメグミの両手を、彼の両手がそっと包んで握った。