異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
ほろりと涙が溢れる。コンラートはメグミの頭の上に手を置いて、ぽんぽんと軽く叩きながらことの次第を説明してゆく。
「店主は俺の連絡先を知らないから、そのうち俺が来たら教えるつもりで、長い間仕舞っていた。俺が顔を見せたときに奥の方から出してきたんだ。着物という衣類だが着方さえ分からないものだと言っていた」
「三年も前なのに」
「他のはそれなりに売れたそうだが、これだけは形からしてよく分からないものだからと、俺に買わせた。織りを調べたら実に珍しいものだと言われて、誰が持ってきたのか、あとで訊きに行ったんだ」
絣は、あらかじめ決めていた文様にしたがって染め分けた糸を用いて織り上げた、模様織物だ。染めと織りの技術が必要なこれは、この異世界において、非常に珍しい布であるのは間違いない。
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