異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
耳元辺りで言葉が放たれた。
「俺はお前を愛している。結婚してくれ。死ぬまで一緒にいよう」
深さを感じる声で、動かしがたい流れを持って言われる。メグミはきゅっと唇を噛んだ。
見ないようにしてきた彼の気持ちが、はっきりした形で外へ出ている。彼女自身の思いもまた出てしまいそうだ。しかし、返事は一つしかない。
「できません。お断りをさせていただきます」
コンラートは彼女の両肩を掴んで放すと、今度は激しく言う。
「なぜだ」
「身分違いです」
「そんなものはどうにでもなる。ジリン公爵からおまえを養女にしたいという申し出があった。公爵令嬢になれば、身分がどうのと誰にも言わせない。俺の妻になれ、王妃になってくれ、メグミ!」
「それはできません。私の親は、哲二とさゆりなのですから」
メグミの肩を掴んだ手を離して少し間を置いたコンラートの瞳の中に、激情が籠ってくる。恐ろしいような視線で睨みつけられた。これぞ黒獣王の目だ。
「俺がお前を手放すと思うか。大体、断っているお前が、なぜ泣く」
涙が零れているのを自覚できなかった。けれど答えは一つしかないのだ。
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