異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
部屋へ戻って荷物の整理をする。ベッドの上に広げた物を、ジリンのところで揃えてもらった品物の一つ、大きめの旅行カバンに詰めてゆく。
アルマはいなくなっていた。下女中の仕事をかなり一生懸命こなしていた彼女がどうして部屋主の持ち物を無断で捨てたのか、理由を聞きたかった。
位牌はなくなってしまったが、その代りのようにして母の着物をコランから渡された。その着物をしみじみと眺めたあと抱きしめると、また涙があふれ出た。
――コラン様……。……顔が見たい。声が聞きたい。もう無理だけど。
さすがにあれほど頑なにプロポーズを断っていては、テツシバにはもう来てもらえないだろう。今更メグミが逢いたいなどと思うのは、都合が良すぎるだろうに。
こんこんとドアを叩く音で顔を上げればローズベルが立っている。
――そういえばドアを開けっ放しだった。
急いで手で目元を拭ったが、どうやら泣いているのを見られてしまった。
ローズベルは、部屋の中に入ってドアを閉めると、ベッド横に立っていたメグミの傍まで来る。腰に手を当て、呆れた様子で指摘した。
「城を出るんですって? お父様に聞いたけど、陛下の求婚を断ったそうね。そんなふうに隠れて泣くなら、どうして断るのよ」
メグミが城を出るのを聞いたから父親に理由を問い詰めた……といった流れだろうか。ジリンは遅くにできた一人娘には大層弱い。あれほどの大貴族なのに、一人娘に詰め寄られると隠し事まで口にしてしまう。
アルマはいなくなっていた。下女中の仕事をかなり一生懸命こなしていた彼女がどうして部屋主の持ち物を無断で捨てたのか、理由を聞きたかった。
位牌はなくなってしまったが、その代りのようにして母の着物をコランから渡された。その着物をしみじみと眺めたあと抱きしめると、また涙があふれ出た。
――コラン様……。……顔が見たい。声が聞きたい。もう無理だけど。
さすがにあれほど頑なにプロポーズを断っていては、テツシバにはもう来てもらえないだろう。今更メグミが逢いたいなどと思うのは、都合が良すぎるだろうに。
こんこんとドアを叩く音で顔を上げればローズベルが立っている。
――そういえばドアを開けっ放しだった。
急いで手で目元を拭ったが、どうやら泣いているのを見られてしまった。
ローズベルは、部屋の中に入ってドアを閉めると、ベッド横に立っていたメグミの傍まで来る。腰に手を当て、呆れた様子で指摘した。
「城を出るんですって? お父様に聞いたけど、陛下の求婚を断ったそうね。そんなふうに隠れて泣くなら、どうして断るのよ」
メグミが城を出るのを聞いたから父親に理由を問い詰めた……といった流れだろうか。ジリンは遅くにできた一人娘には大層弱い。あれほどの大貴族なのに、一人娘に詰め寄られると隠し事まで口にしてしまう。